技術者コラム

境界層メッシュの第一層の大きさと結果への影響

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前回、境界層メッシュの層数についてお話をさせていただきました。 今回は壁面に接する第一層目のサイズについてお話をさせていただきたいと思います。 流体解析では壁面近傍の取り扱いとして、壁関数というものでモデル化されているのが一般的です。 境界層メッシュの第一層は、壁関数との兼ね合いでサイズを指定します。

右図は、壁面からの流速分布を示しています。横軸が流速、縦軸が壁面からの距離です。 一般に主流の流速の約99%程度の流速の位置を境界層流れの外縁とされており、この部分を境界層メッシュ内で計算をします。 ただ、この境界層流れをどのように解像するかは乱流モデルの選択により変える必要があります。

左図は横軸を壁面からの距離の無次元量、縦軸を流速の無次元量でプロットしたグラフです。この関係を壁関数と呼びます。 壁面からの距離の無次元量(以後Y+と記載)が4以下を粘性低層と呼び、層流の様相を示す領域です。 4以上30(~70)以下を遷移層といい、層流から乱流へと変化する領域です。 30以上を乱流層といい、乱流の様相を示す領域です。 ここで、実際に解析する場合の乱流モデルについて話をさせていただきますが、 高レイノルズ数型と言われる乱流モデルは乱流層での使用を想定したモデルで、低レイノルズ数型と言われる乱流モデルは粘性低層での使用を想定しています。 よくある間違いととして、低レイノルズ数型はレイノルズ数が低い乱流現象、高レイノルズ数型はレイノルズ数が高い乱流現象に対応していると誤認識されることが多いようです。

最近の市販ソフトウェアには高レイノルズ数型の乱流モデルでも、粘性低層を考慮した壁関数が用意されているので、あまり気にする必要がなくなってきています。 右図に、LESを使用した非定常計算の平均場を正として、低レイノルズ数型、高レイノルズ数型の乱流モデルを使用した場合の結果を示します。 低レイノルズ数型を使用した場合と高レイノルズ数型を使用した場合でそれほど顕著な違いは見られません。

高レイノルズ数型だからと言って、Y+を乱流層に合わせたメッシュにしようとこだわってしまうと、現象をとらえられず間違った結果を得ることになってしまいます。 左図に乱流層に合わせたY+で計算した結果(上図)と粘性低層も含めたY+での計算結果(下図)の比較を示します。乱流層に合わせた結果は円柱回りの流れが解像できておらず、円柱後部に至っては放射状に広がるような流れになってしまいました。 ケースバイケースではありますが、流れの状況に応じて境界層メッシュの1層目を修正する必要があることがわかります。

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