今回は、流体の物性についてお話をさせていただきます。
流体解析に限らずCAE解析を実施する場合、物性値は重要な要素です。
基本的に流体解析ではマッハ数が0.3より大きい流れの場合、圧縮性流体で解く必要があると言われています。
また、自然対流などの温度変化を伴う流体の動きを解析する場合も圧縮性が必要とされています。
それは、密度変化の影響が無視できなくなるからなのですが、その影響がどのように現れるかを比較することはあまりないかと思います。
今回、流速や温度の影響を考え圧縮性で解くか非圧縮性で解くかで現象がどのように異なるかを事例を紹介しつつ説明させていただきます。
まずは温度変化による解析の事例で、右図に示したものはキャビティ内で対する壁面の温度が異なる場合の現象です。
左側が圧縮性、右側が非圧縮性で解析したときの結果です。
上側に温度分布、下側に流速の分布を示しています。
圧縮性で解析した場合、温度の高い壁面では上昇気流、低い壁面では下降気流となりキャビティ内で対流が起こっていますが、非圧縮性の場合は流れは発生せず温度も高い壁面から低い壁面への方向に1次的な分布になっています。
なお、温度差が小さい場合、圧縮性を使用せずに解く方法もありますが、別の機会でお話をさせていただきたいと思います。
次に、ラバルノズルというノズルの事例を示します。
左図は流速の分布ですが、ノズルの絞られているところでは同じような流速になっています。
ノズル後部から噴出部にかけて圧縮性では流速が速くなっていることがわかります。
これは、流体が膨張することにより加速がかかる現象をとらえています。
一方、非圧縮性ではノズル後部の流路が広がる部分で流速が遅くなっていきます。
なお、流入量はノズルの絞り面の流速が同程度となるように調整したため、一致はしておりません。
右図は、くさび型の翼形状の事例です。
左側からマッハ1を超える流速で流れている状況ですが、
翼の後部で圧縮性では流速があがっています。この時衝撃波と言われるものが発生しているのですが、詳細は別の機会にさせていただきます。
一方、非圧縮性では翼の側面の中心あたりで流速があがり、後部では遅くなっています。
これも、ラバルノズルの場合と同様に、流体の膨張によって流速があがる現象を圧縮性では捉えられていて、非圧縮性では捉えられないことによるものです。
少々極端な事例でしたが、圧縮性で解く必要のある領域を非圧縮性で解析した場合にどのような結果が得られるかが分かっていただけたかと思います。
なお、左図に示したのは単純な円管内を圧縮性と非圧縮性で解いた場合の比較ですが、流入流速としては150m/sでマッハ数0.44の圧縮性で解析する領域です。
結果は、圧縮性のほうが少し流速が高い程度になります。
この違いは人によって、また評価したいものによって意見が分かれるかもしれませんが、圧縮性の領域でも非圧縮で解いても問題ない場合もあり、その場合は非圧縮性で解いたほうが計算コストが低くなります。