樹脂製の衣装ケースの天板に、本など重いものを積み上げて、すぐに撤去すると元に戻るのに、数年単位で放置しておくと天板がたわんだまま、元に戻らなくなっていたというような経験をしたことはありませんか?これはクリープ変形が時間経過にともなって進行したためです。
このメカニズムを簡潔なことばで表現してみると、
「部材に荷重が作用したまま時間が経過すると、その状態になじんでしまって元の形に戻りきらなくなる現象」という感じでしょうか。
時間に関係する変形ですから、応力が弾性限界を超えた時に生じる「塑性変形」とは別のものです。
クリープ変形と塑性変形の双方が生じる場合もありますが、上の衣装ケースの例ではすぐに撤去すると元に戻ったことからクリープ変形が主要因であるといえます。
クリープ変形の進行度合いは材質ごとに異なりますが、上述の荷重の強さや時間経過とともに、温度環境にも大きく影響を受けます。
部材がアルミやスチール等の一般的な金属類であれば、部材温度が数百度レベルのかなりの高温になっている場合を除いて、クリープの進行は微々たるものなので、通常はあまり問題にされません。
一方、樹脂やゴムのような部材では常温でさえ徐々に進行し、100℃くらいでも進行度合いが大きく増すことがあるので注意が必要です。
前置きが長くなりましたが、ここから樹脂やゴムでできたシール(パッキン)のクリープ解析事例についてご紹介いたします。今回は、カシメ締め付け時間の違いによるクリープ変形状態を調べました。
技術者コラム
樹脂・ゴム製シール材のクリープ変形 (前編:常温クリープ)
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