流体解析を実施する上で、重要なこととして乱流モデルやメッシュサイズ、物性値についてお話をさせていただきましたが、
今回は境界条件の壁面についてお話をさせていただきます。
物性値とともに、境界条件を間違えると正しい結果が得られません。
再びですが、円柱モデルを用いて、どのように変わるのかを示していきたいと思います。
ここでの比較ですが、壁面条件については通常の壁面条件であるノンスリップ壁面とスリップ壁面、また、ノンスリップ壁面について表面粗さを考慮した場合についてです。
流体解析で一般的に使われるノンスリップ壁面は表面粗さがない状態となっており、現実ではそのような壁面はまれかと思います。
ノンスリップ壁面を設定する場合、市販の流体解析ソフトウェアは表面粗さを考慮することができるものもあります。
ただ、ソフトウェアによって設定名が違い、表面粗さ、等価粗さ、粗さ係数等いろいろありますので、使用する場合はマニュアル等でどのような影響の仕方をするかは確認が必要です。
また、スリップ壁面は、解析都合上の対称面等抵抗のない面として現実的には無い壁面を作る場合に使われることが多いです。
右図に示しますのは、ノンスリップ壁面とスリップ壁面の違いです。
ノンスリップ壁面については、以前にお話しをさせていただきましたカルマン渦列というものが発生しておりますが、
スリップ壁面については発生しておりません。
ここでは壁面上に抵抗が無く、剥離現象が起きづらいためにカルマン渦が発生しない結果となっています。
実施した解析の流れが異なる場合、壁面条件がスリップ壁面になっているかノンスリップ壁面になっているかご確認いただくことも考慮してください。
また、ノンスリップ壁面として条件を付けたい場合、解析上の壁面はきれいな面を想定されています。そのため、現実の壁面とは状況が異なる場合があります。
その一つが表面粗さです。左図に示したのが、通常のノンスリップ壁面としたものと、ノンスリップ壁面に約10mmの表面粗さを考慮した流れの比較です。
カルマン渦の発生状況に違いはあまり見られませんが、壁面近傍での乱流エネルギーに違いが見られます。
ただ、円柱そのものが小さいモデルで表面近傍での乱流エネルギーは小さいため、流れ場への影響が出ていません。
右図に示しますが、流れ場の乱流エネルギーのほうが2桁ほど大きい値となっています。
流れ場への影響については、ある程度の大きさが必要となります。
左図に平板上の乱流エネルギーを示しますが、下流にいくに従い、乱流エネルギーは大きくなっており、表面粗さを考慮した場合のほうが大きい値を示しています。
解析対象が大きく、後流部の流れが合わない場合には壁面の表面粗さを考慮してみるというのも一つの方法かもしれません。
ただし、筆者が担当した解析対象で表面粗さを考慮しないといけないというものは、あまりありませんでしたので、優先度としては低いかと思います。