技術者コラム

【新規事業コラム2】ドローン農薬散布のシミュレーション技術とは?
圃場への飛散を可視化する流体解析の活用事例

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「ドローンで農薬散布をしているけど、本当にムラなく散布できているのか不安」「風が強い日はどの程度まで作業できるのか判断が難しい」「隣の圃場への飛散リスクを事前に把握したい」 そう思う方もいるかもしれません。 実は、自動車開発で培われた流体解析シミュレーション技術を活用すれば、農薬散布前に飛散パターンや付着状態を可視化し、最適な散布条件を見つけることが可能になります。 前回の記事では、トヨタシステムズがドローンビジネスに挑戦する背景と、シミュレーション技術で社会課題を解決する構想をご紹介しました。本記事ではその具体的な第一歩として、Japan Drone 2025での展示を通じて見えてきた、ドローン農薬散布の現場課題と流体解析シミュレーションによる実践的な解決策を詳しく解説します。

1. Japan Drone 2025で見えた
農業ドローンへの高い関心

2025年11月26日、27日に開催された「Japan Drone / 次世代エアモビリティ EXPO 2025 in 関西」にトヨタシステムズが出展し、2日間で180名もの来場者をお迎えしました。 今回は展示した2つのソリューションのうち、ドローンによる農薬散布を最適化する「流体解析シミュレーション技術」をご紹介します。アンケート調査では、来場者の17.44%(34名)がこの技術に強い興味を示し、農業現場での実用化への期待が明確になりました。 本記事では、シミュレーション技術がどのように農薬散布の課題を解決するのか、具体的な事例とともに解説します。

2. ドローン農薬散布が抱える
3つの「見えない」課題

ドローンによる農薬散布は作業効率を大幅に向上させる一方で、農業従事者やドローンサービス事業者が直面する課題があります。

課題1:散布ムラの発生
風速や風向の変化により、圃場内での農薬の付着状態にムラが生じます。「きちんと均一に散布できているか」を農家の方に証明することが困難だという声が、展示会でも多く寄せられました。

課題2:周辺圃場への飛散リスク
意図しない周辺エリアへの農薬飛散は、近隣農家とのトラブルや環境への影響につながります。しかし、実際の散布作業では飛散範囲を正確に把握することは不可能でした。

課題3:気象条件の判断基準が不明確
「風が強い日はドローンを飛ばせない」という現場の声がある一方で、具体的にどの程度の風速・風向なら安全に作業できるのか、明確な基準がありませんでした。

3. 流体解析シミュレーションによる
農薬散布の可視化

トヨタシステムズは、自動車開発で培った流体解析技術を農業分野に応用し、これらの課題を解決します。

3.1. 自動車の空力技術を農業へ応用
高速走行する自動車の空力性能最適化やエンジン内部の空気流解析に使われてきた精密なシミュレーション技術を、農業の課題解決に活用します。 仮想空間上で、ドローンから噴霧された農薬の粒子一つひとつの動きを再現し、散布パターンを詳細に分析することが可能です。

3.2. 散布作業前に結果を予測する
実際に農薬を散布する前に、風速・風向・ドローンの飛行高度・速度などの条件を入力することで、PC画面上で散布結果をシミュレーションできます。 これにより、対象の圃場にのみ農薬を的確に届け、周辺への飛散を防ぐための最適な作業条件を事前に見つけ出せます。
右側の画像は、飛行中のドローンから散布された農薬が圃場に広がっていく様子をコンピューターシミュレーションで再現したものです。ドローンは画像の左斜め下に向かって進行しています。
※MSC Software社 scFLOWを利用

3.3. 気象条件による散布パターンの違いを定量化
左図はドローンが農薬散布する様子を上から見た図です。図の左側に向かってドローンが進行しています。散布量が多い箇所から赤→オレンジ→黄→緑と色分けして表現しています。この4枚の図は、コンピューター上で気象条件を変化させると、農薬の散布範囲がどのように変わるのかをシミュレーションしたものです。
結果は、向風が3m/sの場合と5m/sの場合で、農薬の飛散パターンが大きく変わることを視覚的に示しています。 3m/sの横風では、散布パターンがずれるだけでなく、圃場への付着状態に顕著なムラが生じることが分かります。この肉眼では捉えられない知見こそ、シミュレーション技術の真価です。
作業可能な気象条件を数値で明確化することで、作業のリスクを低減し、農薬散布の精度と効率を飛躍的に向上させます。
※MSC Software社 scFLOWを利用

4. 現場から寄せられた具体的なニーズ

Japan Drone 2025の展示会で、農業従事者やドローンサービス事業者から以下のような声をいただきました。 散布品質の証明に関するニーズ 「農家の方に、きちんと散布できたことを納得してもらいたい。シミュレーションでそれを証明できるのは魅力的だ」 作業安全性の判断基準に関するニーズ 「風が強い日はドローンを飛ばせない。流体解析で、どのような条件下なら安全に作業できるか、具体的な事例があると助かる」 散布精度の事前確認に関するニーズ 「どこまで農薬が届いているのか、散布にムラがないかが事前に分かると、安心して作業できるので嬉しい」 これらのフィードバックは、農薬散布を可視化し最適化するシミュレーション技術が、現場で強く求められていることを示しています。

5. シミュレーション技術がもたらす
3つの価値

流体解析シミュレーションは、農業現場に以下の価値を提供します。
価値1:作業品質の見える化と証明
散布前のシミュレーション結果と実際の作業条件を照合することで、農家の方に対して散布品質を客観的に証明できます。
価値2:リスクの事前回避
周辺圃場への飛散リスクや散布ムラの発生を事前に予測し、作業計画を最適化することで、トラブルを未然に防ぎます。
価値3:作業効率の向上
気象条件ごとの最適な散布パラメータ(飛行高度、速度、散布量など)を事前に把握することで、現場での試行錯誤を削減し、作業時間を短縮できます。

6. まとめ:シミュレーション技術で
農業の未来を支える

農薬散布の可視化は、最初の一歩に過ぎません。トヨタシステムズは、シミュレーション技術を核として、日本の農業をより精密で、効率的で、持続可能なものへと変革していくことを目指します。 ドローンでの農薬散布における飛散や散布ムラといった課題でお困りの農業従事者の皆様、ドローンサービス事業者の皆様、ぜひ一度トヨタシステムズまでご相談ください。データを最も価値あるツールに変え、未来の農業を共に支えていきましょう。

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